
皆様は探偵にどういうイメージがありますか?
探偵というとドラマや漫画で見られる。「警察の依頼を受けて謎を解いて犯人を見つけ、事
件を解決する」みたいなイメージがあります。「帽子かぶってパイプたばこくわえて虫眼鏡であれこれ探してる中年男性」みたいなステレオタイプなイメージを持たれている方もいらっしゃるはずです。また、そういった作品を見聞きして探偵に憧れたことのある人は多いはずです。
しかし現実はフィクションと異なり、警察の捜査に協力するものではありません。個人や企業からの依頼を受けて浮気、不倫等の調査、特定人の素行調査や企業などの信用の調査などが行われています。
そもそも探偵業とは?
他人の依頼を受けて特定人の所在又は行動についての情報であって当該依頼に係るものを
収集することを目的として面接による聞き込みや尾行、張り込みその他これらに類する方
法により実地の調査を行って、それにより得られた調査結果を当該依頼人に報告する業務
を行う営業です。
簡単に言いますと依頼を受け、ターゲットとなる人物の調査を行い、その結果を依頼人に報
告する流れとなります。
探偵業法の導入
悪徳業者による違法な探偵業務、契約内容によるトラブル、業務上知り得た秘密の悪用など
に対処するために平成 19 年に「探偵業務の適正化に関する法律(探偵業法)」が施行されるようになりました。
探偵業法の目的は、探偵業について必要な規制を定め、業務の適正化を図り、それにより個
人の権利利益の保護に資することです。
探偵業者に対し法で規制をかけて好き勝手出来なくして、利用者たる依頼人が安心して探
偵業者を利用できるようにした。そういった感じでしょう。
探偵業を始めるのに必要な資格とは?
意外かもしれませんが、特別な資格、職務経験等は必要ありません。
(欠格事項に該当しない人なら)届出をすれば誰でも探偵になることができます。
しかしながら全く経験や知識のない人が事業を始めてもうまくいくはずがありません。
探偵学校や他の探偵事務所等で知識や経験を積んで開業することをお勧めします。
届出について
探偵業を営む場合、営業を開始する日の前日までに営業所ごとに営業所の所在地を管轄す
る都道府県の公安委員会に営業の届け出をする必要があります。実際届出の窓口となるの
は営業所の所在地の管轄警察署(生活安全課防犯係に提出)となります。
必要書類(届出書、誓約書、履歴書は警察 HP にて入手できます。)
書類以外に手数料として 3,600 円が必要となります。
1. 探偵業開始届出書
2. 履歴書
3. 住民票の写し(本籍地記載あり(外国人の場合は国籍)でマイナンバーの記載のないも
の)
4. 誓約書(欠格事項に該当しない事を誓約)
5. 身分証明書(市区町村が発行)(注)免許証やマイナンバーカードの類ではない
申請者が未成年の場合は次の区分に応じた書類(婚姻により成年擬制された場合を除く)
探偵業に関し法定代理人から営業許可を受けている未成年者は法定代理人の氏名及び住所
を記載した書面(法定代理人が法人の場合はその名称、住所、代表者名の記載のある書面)
法定代理人から当該営業の許可を受けていることを証する書面
法定代理人の許可を受けていない未成年者は法定代理人に係る 2 から 5 までに掲げる書類
(法定代理人が法人の場合は当該法人、その代表者、役員全員に係る 2 から 5 までに掲げ
る書類となります。)
法人の場合
1. 探偵業開始届出書
2. 定款の謄本
3. 登記事項証明書(法務局発行)
4. 全ての役員に係る次の書類
4-1 履歴書
4-2 住民票の写し
(本籍地(外国人の場合は国籍)記載ありでマイナンバーの記載のないもの)
4-3 身分証明書(市区町村発行)
4-4 誓約書(欠格事項に該当しないことを誓約する)
これらは営業所ごとの届け出となります。
公安委員会から交付された「探偵業届出証明書」は営業所の見やすい場所に掲示する必要が
あります。
探偵業者が守らなければいけない義務
探偵業者は業務を通じて多くの情報を得ます。そしてその情報が不適切に扱われた場合、他
人の権利や安全が脅かされる可能性もあります。
業務を行うに当たっては、人の生活の平穏を害する等個人の権利利益を侵害することがな
いようにしなければなりません。
契約時の義務
探偵業者は依頼者と探偵業務を行う契約を締結しようとするときは依頼者から調査結果を
犯罪や違法な差別的取り扱いその他違法な行為のために用いない旨を示す書面の交付を受
ける必要があります。
また、探偵業者は契約を締結しようとするときはあらかじめ依頼者に対し契約の重要事項
について書面を交付して説明する義務があります。
探偵業者は契約を締結したときは依頼者に対し契約の内容を明らかにする書面を交付する
必要があります。
探偵業務の実施に関する規制
探偵業者は調査結果が犯罪や違法な差別的取り扱いその他の違法な行為のために用いられ
ることを知ったときは当該探偵業務をしてはいけません。
(例)いやがらせやストーカー目的の依頼など
最悪の場合、依頼人のみならず請け負った探偵業者も逮捕、検挙される可能性があります。
また、探偵業者以外の者に探偵業務を委託してはなりません。
秘密を守る義務
探偵業者の業務に従事する者は秘密を守る義務があり、業務上知り得た人の秘密を漏洩さ
せてはいけません。
また、探偵業者は探偵業務に関して作成、取得した資料の不正利用の防止措置を取る義務が
あります。
従業員に対する教育
探偵業者は従業員に対し探偵業務の適正な実施のため、必要な教育を行わせなければいけ
ません。
名簿の備付け等
探偵業者は営業所ごとに従業員名簿を備えて氏名や採用年月日、従事させる探偵業務の内
容などを記載する必要があります。
欠格事項
探偵業は基本的に届出さえすれば誰でも始めることができるのですが以下の欠格事項に当
てはまる場合は探偵業を始めることはできません。
1. 破産手続き開始の決定を受けて復権を得ない者
2. 禁固以上の刑に処せられ、又は探偵業法の規定に違反して罰金の刑に処せられその執行
を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して 5 年を経過しない者
3. 最近 5 年間に営業停止命令、営業廃止命令に違反した者
4. 暴力団員または暴力団員でなくなった日から 5 年を経過しない者
5. 心身の故障により探偵業務を適正に行うことができない者として内閣府令で定めるもの
6. 営業に関し成年者と同一の能力を有しない未成年者で法定代理人が 1 から 5 又は 7 のい
ずれかに該当するもの
7. 法人でその役員のうち 1 から 5 までのいずれかに該当する者があるもの
欠格事項に当てはまったからと言って永久に探偵業を始められないというわけではありま
せん。当てはまってしまった場合は欠格の状況や期間が明けるまで待ってから届け出をし
ましょう。
最後に
探偵業は欠格事項に該当していない場合、きちんと届出さえ行えばだれでも始めることが
できる仕事です。
しかしそれとは裏腹に重い責任や義務を負うこととなる仕事です。業務で知り得た秘密を
流出させてしまうことによりその人の安全を脅かす結果や差別偏見を助長させてしまう恐
れがあります。また、依頼人が悪意のある人間であった場合、いやがらせやストーカーなど
の犯罪に加担する結果となってしまい、業者側も検挙されるなどの不利益を被る可能性が
あります。
(どの業務にも言えることですが)探偵業を行う場合、誠実に義務を守り仕事を行う姿勢が
特に必要であると思います。
先にも述べましたが、いきなり知識ゼロから始めてもうまくいくはずがありません。探偵学
校で知識を身につけたり、他の探偵事務所に就職しそこで経験を得てから開業することを
お勧めします。
探偵業の届け出をしたい方はぜひ行政書士に相談してください。
行政書士西久保大地事務所
西久保 大地