インターネット異性紹介事業届出について

皆さんは恋人、結婚相手などのパートナーにどうやって出会います(した)か?
「学校の同級生とそのままエスカレータ式に結婚した」とか「職場の同僚とお付き合いして
結婚した」、「友達の紹介でお付き合いに発展した」あるいは「お見合いで結婚した」とか「結婚相談所で紹介された人と結婚した」なんて人もいるでしょう
しかし、「学生時代にさほど異性との関係が無かった」とか「職場に同性しかいない」とか
「異性を紹介してくれる友達がいない」とか「結婚相談所は高そうだからちょっと…」とか
そういう理由で恋人や結婚相手を見つけられない人はいます。また、機会があったとしても
「自分の所属するコミュニティ(職場や仲間うち)では気まずくなるので探したくない」と
か単純に「いい人がいない…」いう人もいるでしょう。

このような人に異性との出会いの機会を与えているのがマッチングサイト(アプリ)、出会
い系サイトです。

しかしながら異性を探す為のサイトというとどうしてもアングラなイメージを持ってしま
う人もいます。「児童が登録しているんじゃないか?」とか
「ヤクザが運営しているんじゃ
ないか?」とか「サクラ雇っているのでは?」とか、ひと昔前の法規制が無かったり甘かった時代は不健全な業界で、そういった悪徳な業者もあったでしょう。2003 年に「インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為
の規制等に関する法律」いわゆる「出会い系サイト規制法」が施行されて 2009 年に利用者
の年齢、本人確認の義務化や営業する際の公安委員会への届け出が義務化されその部分が
施行されました。
この法規制により安心して利用できる環境になったといえます。

上記の法規制によりインターネット異性紹介事業、すなわちマッチングサイトや出会い系
サイトを営業するためには公安委員会に届け出をしなければなりません。また総務省に電
気通信事業者の届け出もします。


そもそもインターネット異性紹介事業とは?
「インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律」に
よると異性交際を希望する者の求めに応じその異性交際に関する情報をインターネットを
利用して公衆が閲覧することができる状態に置いてこれを伝達しかつ当該情報の伝達を受
けた異性交際希望者が電子メールなどの電気通信を利用して当該情報に係る異性交際希望
者と相互に連絡することができるようにするサービスを提供する事業と定義されています。


また警察の HP 等にある出会い系サイト 4 要件によると

面識のない異性との交際を希望する者すなわち異性交際希望者の求めに応じその者の異性
交際に関する情報をインターネット掲示板に掲載するサービスを提供している事

異性交際希望者の異性交際に関する情報を公衆が閲覧できるサービスであること

インターネット掲示板に記載された情報を閲覧した異性交際希望者がその情報を掲載した
他の異性交際希望者とメールなどで相互にやり取りできるようなサービスであること

上記サービスが反復継続的に提供されていること(有償無償は問わない)
これらをすべて満たすものがインターネット異性紹介事業となっております。

簡単にまとめますと

自分のプロフィールをサイトに登録し公開できる。

そのプロフィールを、出会いを探している他の会員が閲覧でき、また自分が他の会員のプロ
フィールを閲覧できる。

プロフィールを見て気に入った会員にメッセージを送ることができる。また自分が他の会
員からメッセージを受け取ることができる。

運営が続いていて、そのサービスが反復継続的に提供されている。

ということになります。


では同性愛者向けの出会い系サイトは?
「異性」同士の出会いが目的なので所謂ゲイ、レズビアンの人などのための同性愛者向け出
会い系サイトの場合はインターネット異性紹介事業者には当てはまらないことになります。
(LGBT など多様化の流れにより今後改
正される可能性はあります。)

インターネット異性紹介事業者となってマッチングサイトや出会い系サイトを営業するに
あたって

(これはどの業界にも言えることですが)ブランド力や信用力のある大手サイト(アプリ)
がある以上、それらの大手業者と利用者の取り合いをしなければなりません。当然ながら大
手の誰もが一度は聞いたことがあるサイトと、最近できたばかりの無名のサイトでは信頼
度のある前者を利用したいと思うものです。普通に大手と利用者の取り合いをするよりも
ニッチな分野で戦うのも一つの手なのかと思います。(例えば「〇〇の仕事をしている人限
定」とか「障がいを持つ人向け」のマッチングサイトを営業する等です。)
先ほど書きましたがこの業界にアングラなイメージを持たれている人も少なからずいます。
「運営している会社はきちんとした会社なのか?」とか「個人情報の管理はちゃんとしてい
るのか?」とか「詐欺サイトとかじゃないか?」普通の商品を購入する以上に「疑い」や「不安」から入られるかもしれません。健全な経営を続けてコツコツと信頼度やブランド力を上げていくことが近道だと思います。


届出の窓口は?いつまでに届け出る?

(注)公安委員会への届け出と総務省への届け出があります。
事業を開始する日の前日までに事業の本拠となる事業所(事業所のない場合は住居)の所在
地を管轄する警察署の少年課を経由で公安委員会へ事業開始届出書と必要な添付書類を提
出します。(事業所が複数ある場合は中枢となる事業所が本拠事業所となります。)
ここでいう事業所とは事業活動の中心となる一定の場所で、私書箱、郵便物の取り扱いを行
う代行者の所在地や電話機やサーバーコンピューター等の機器が設置されているのみの無
人事業所、電話代行者等、連絡取次事務担当者だけしかいないような事業所は事業所とは認
められません。
複数のサイトを運営している場合は一通の届出書にまとめて記載して届け出します。
また複数の事業者が共同してサイト運営を行う共同事業の場合は一通の届出書を連名で作
成します。
(共同事業の場合はサイト運営の本拠となる事業所の公安委員会が届け出先の行政庁となる。)

届出に必要な書類

以下の書類が必要となります。
公安委員会への手数料は不要です。
必要書類(三か月以内に取得されたもの)
事業開始届出書
住民票の写し(本籍、外国人の場合は国籍の記載のあるもの)法人の場合は役員全員のもの
が必要
識別符号付与業務受託者は個人の場合は受託者のものを法人の場合は受託業者役員及び従
事者全員のものを提出すること
身分証明書(禁治産者、破産者でないこと等を示す証明書の事であって、運転免許証やマイ
ナンバーカードの類ではない)
法人の場合は役員全員分必要で、未成年の場合は法定代理人のものを提出、外国人の場合は
提出不要
識別符号付与業務受託者は受託者のものを(法人の場合は役員全員分)提出
送信元識別符号を使用する権限があることを疎明する資料(プロバイダ等から使用するサ
イトの url の割り当てを受けた通知書のコピーやドメイン検索サイトの画面のコピー(管理
者情報の書いてあるページ)など)
他者の所有する url を使用する場合は url 使用許諾書など
法人の場合、定款の謄本(インターネット異性紹介事業を営業できる旨の記載がある事、末
尾に「本定款は会社保存の原本と相違はありません。令和〇年〇月〇日 株式会社〇〇〇 代
表取締役〇〇 〇〇 代表者印」を記載すること(代表者が原本証明する場合))、
登記事項証明書が必要になります。
識別符号付与業務受託者の場合は受託業者の定款を提出する。(法人の場合)
誓約書(法人の場合は役員全員分)
アルコールや薬物中毒でないこと等を証明するための医師の診断書(識別符号付与業務受
託者の場合)(法人の場合役員全員分)
未成年の場合は法定代理人の氏名、住所を記載した書面、相続証明書も併せて提出
詳しくは警察 HP を確認してください。


届出書に記載する「児童でないことの確認方法」

利用者が 18 歳未満ではないことを確認する方法を記載します。
児童でないことの確認を済ませていない利用者にサービスを利用させた場合行政処分を食
らう可能性があります。利用させる前に以下のいずれかの方法により年齢確認をしなけれ
ばなりません。

運転免許証、健康保険証、マイナンバーカードなど生年月日が確認できる書面の内、年齢又
は生年月日、書面の名称書面の発行、発給者の名称に係る部分について提示、写しの送付又
は画像の送信を受ける方法で確認

クレジットカード等児童が利用できない方法によって料金を支払う旨の同意を得る確認方法

上記2通りの方法により確認が取れた者に対し識別符号(ID,パスワード)を付与して次回
以降は識別符号によるログインにより本人確認を行う方法
児童でないことの確認を識別符号付与業務受託業者に委託している場合は利用者の送信し
た識別符号を委託業者に照会して確認します。
利用者に特定情報を閲覧させたり、書き込みさせたり、送受信させない場合は自己申告等に
よる利用者の年齢確認を行います。
(注)欠格事項に該当する一定の犯罪歴を有する者、復権を得ていない物、暴力団員である
者等は事業者にはなれません(詳しくは誓約書や警察 HP にて)
届出後に欠格事項があることが確認された場合は事業を廃止しなければなりません。
そうなると多大な損失になり、自身はもちろん利用者にも多大な迷惑をかけることになり
ますので欠格事項に該当している場合は欠格が明けるまで待ってから届出を行い、事業者
になるべきです。
総務省への「電気通信事業者」の届出
以下の書類を提出します。
電気通信事業届出書、
提供する役務に関する書類
ネットワーク構成図(総務省 HP に具体例があるはずです。)
法人の場合は定款の写し、個人の場合は住民票
受理通知書送付用の封筒(切手の貼り付けと送付先の記載を忘れずに)
各地方の総合通信局へ届け出します。(例:関東の場合は関東総合通信局に届出する)
(あて先は総務大臣)


開業後に注意しなければいけないこと。
インターネット異性紹介事業者には閲覧防止措置義務(削除義務とも)があります。
事業者は禁止誘引行為(例えば児童が異性交際の相手方となるように誘う書き込みや大人
が児童との異性交際の相手方となるように誘う書き込み)が行われていることを知りなが
らそれを放置していてはいけません。禁止誘引行為幇助に問われる可能性があります。
変更届、廃業届はきちんと出しましょう
届け出事項について変更があった場合は変更の日から起算して 14 日以内(登記事項証明書
を添付する場合は 20 日以内)に事業変更届を
事業を廃止する場合は事業廃止届を事業廃止の日から起算して 14 日以内に事務所を管轄す
る警察署の少年課を経由して公安委員会へ届け出をしなければいけません。
また他者に自己の名義貸してサイト運営させてはいけません。
その他にも守らなければいけない事はあります。(詳しくは警察 HP にて)
いずれにしても怠ると刑罰や行政処分の対象となります。

最後に
インターネット異性紹介事業者達の営むマッチングサイトの社会的な役割は非常に大きい
ものだと思います。人口の半分が異性だとしてもそれらの異性が恋人や結婚相手を求めて
いるとは限りません。やはり相手を探している者同士を集める場が必要なのです。結婚相談
所や婚活イベントなどといったものが現実世界にはありますが、やはり料金や敷居を高く
感じてしまい気軽に参加はできないと思う人もいるでしょう。そんな中で比較的低予算で
気軽に恋人や結婚相手を探せるのはマッチングサイトです。

未だにアングラなイメージを持つ人はいます。それは仕方のないことです。過去の悪徳業者
や悪徳な利用者によってそういうイメージが世間的に植え付けられてしまったからです。
インターネット異性紹介事業者の方々の健全な営業、努力によってこれからの業界のイメ
ージが明るくなることを心から願っています。

行政書士西久保大地事務所
西久保 大地

2022年02月13日