
「車で通勤だけど仕事終わりに取引先からの急なお誘いがあって外でお酒を飲んでしまっ
た。」、「車で来たから飲むつもりはなかったけどノリで飲んでしまった。帰りどうしよう?」
飲まないと決めていても飲まざるを得ない状況になることは社会生活を営む上で多々あり
ます。
お酒を飲んでしまったのなら当然ながら運転してはいけません。飲酒運転になってしまう
からです。
飲酒運転は法律で厳しく取り締まられています。悲惨な事故を起こせば自身はもちろんの
こと、他人にも多大な迷惑をかけることになります。
ではどうするべきか?
「このままネットカフェかどこかで仮眠をとるか?」
それもよい選択です。
しかしながら「次の日も仕事だからそれは厳しい」という状態だとします。
しかも「出張」、「プレゼン」そういった重要なイベントが控えていた場合、その日のうちに
帰宅して準備したいと思うものです。
その時思うことは
「誰か代わりに運転してくれないかなぁ~?」だと思います。
その役割を担うのが自動車運転代行業者です。
自動車運転代行業者とは?
自動車運転代行業者とは、他人に代わって自動車を運転する営業を行う業者で、主に酒気を
帯びた状態の依頼者に代わって依頼者の自動車の運転を代行します。
この時に依頼者(とその連れの人)を依頼者(または連れの人)の車両に乗せて運転します。
またこの際に業者は随伴用の車両を同行させなければいけません。
あくまで依頼者の車に依頼者を乗せて運転をするのであって、間違っても随伴車両に依頼
者を乗せることはできません。それはもはやタクシーです。
(タクシーと自動車運転代行の違いはまさに自前の車に人を乗せるか依頼者の車に人を乗せるかでしょう。)
また、「自分は近くのネットカフェに泊まるからとりあえず車と荷物だけ自宅に届けとい
て!」みたいな荷物だけを載せて運転するということもできません。
自動車運転代行業を始めたいけど?
自動車運転代行業は比較的少人数でも始めることができます。随伴用車両 1 台、お客さん
の車を運転する二種免許保持者 1 名、随伴車両を運転する一種免許保持者 1 名の計2名か
らでも開業しようと思えば開業できます。
(安全運転管理者になれる者がいる場合に限ります)
条件さえ満たせば家族や友達、あるいはカップルで始めることだって可能です。
しかし、始めるためには営業所の所在地を管轄する公安委員会から自動車運転代行業者の
認定を受けなければなりません。
多くの許認可に言えることですが営業の自由に干渉するようなこういった許認可制がなぜ
必要なのかといわれると無許可で好き勝手自由にやっていいとなった場合、悪徳業者が野
放しになってしまうことになり、利用者、さらには社会全体の不利益となるからです。
自動車運転代行業の認定の窓口となるのは営業所の所在地を管轄する警察署の交通安全課
です。
申請に必要な書類
以下の書類と申請手数料 12,000 円が必要となります。
申請者の氏名,名称及び住所(法人の場合は代表者の氏名)
主たる営業所、その他の営業所の名称と所在地
安全運転管理者の氏名住所
営業所ごとに使用する随伴用自動車の台数が 10 台以上の場合は副安全管理者の氏名も記載
する
損害賠償措置を講じる措置が分かる書類(損害賠償責任保険契約の締結を証明する書面)
随伴用自動車の自動車登録番号
認定を受けようとするものが法人である場合
役員の住所氏名
住民票の写し(婚姻により青年擬制されたものは戸籍謄本または抄本)(法人の場合は役員
全員分)
誓約書(法人の場合は役員全員)
精神機能の障害に関する医師の診断書(法人の場合は役員全員分)
法人登記事項証明書(法人申請の場合)
定款又はこれに代わる書類(法人申請の場合)
役員名簿(役員の氏名、住所が記載されたもの)(法人申請の場合)
安全運転管理者の要件を備えている事を証する書類
未成年者登記事項証明書(民法の規定により営業を許された未成年の場合)
なお、申請手数料の 12,000 円は仮に不許可となった場合であっても返金されません。その
ため、「誓約書に書かれた欠格事項に該当していないか?」、「安全運転管理者の人選は適切
か?」など、申請書類は提出前に何度もチェックするべきです。
標準処理期間は都道府県にもよりますが 45 日程です。
安全運転管理者とは?
自動車運転代行業者は営業所ごとに年齢、自動車の運転の経験、その他について内閣府令で
定める要件を備える者のうちから安全運転管理者を選任しなければなりません。
「営業所ごとに安全運転管理者が必要? 安全運転管理者って何?」
聞きなれない言葉ではあります。
一言でいうとその営業所の運転代行業務について管理、指導、監督ができる人ということに
なります。
ただし、誰でも自由になれるというものではありません「年齢、自動車の運転経験、欠格事
項に該当していない」このすべてを満たさなければ安全運転管理者にはなれません。
20 歳(副安全運転管理者がおかれることとなる場合は 30 歳以上)以上の者であって自動車
の運転の管理に関し 2 年(公安委員会の行う教習を終了したものにあっては 1 年以上)以
上の実務経験を有する者又は自動車の運転管理に関しこれらの者と同等以上の能力を有す
ると公安委員会が認定した者でなければなりません。
道路交通法第 74 条の 3(運転代行業法 19 条の読み替え規定を含む)の規定による命令によ
り解任された者の場合は解任された日から 2 年を経過していなければなりません。
過去二年以内に一定の違反履歴があるとなれません。(詳しくは警察の HP にて)
副安全運転管理者とは?
副安全運転管理者は営業所に使用する随伴車両が 10 台以上になる場合に選任が必要となり
ます。(10 台以上 20 台未満なら一人、20 台以上 30 台未満なら二人)
副安全運転管理者も一定の年齢、経験、欠格事項に該当していないなどの条件を満たさないとなることはできません。
年齢は20歳以上の者で、自動車の運転管理に関し一年以上の実務経験を有する者、自動車
の運転の経験が三年以上の者又は自動車の運転の管理に関しこれらの者と同等以上の能力
を有すると公安委員会が認定した者でなければなりません。
道路交通法第 74 条の 3(運転代行業法 19 条の読み替え規定を含む)の規定による命令によ
り解任された者は解任された日から 2 年を経過している事も条件となります。
過去二年以内に一定の違反履歴がある場合はなることができません。(詳しくは警察 HP に
て)
「安全運転管理者は実務経験のある俺がやるし、一緒に仕事する友人も自動車免許持って
いるし、随伴車両は俺の自家用車で大丈夫だからこれで大丈夫だろう!!」
いいえ、
お二人のどちらかは二種免許を持っていますか?
依頼者の車に依頼者を乗せて運転を代行するためには第二種運転免許が必要となります。
なお、随伴車両運転者は第一種免許で大丈夫です。(依頼者を乗せないため)
また、運転する車両はあくまでも依頼者の車両です。万が一事故を起こした場合損害を弁償
しなければいけません。そのためきちんとした損害賠償措置として損害賠償責任保険契約
が義務図けられています(共済に加入することなどです。)
損害賠償措置は、対人 8000 万円、対物、車両保険 200 万円を最低保証額として満たしてい
なければなりません。
あくまでも依頼者の車両の損害の措置であって自身の随伴車両の損害の措置ではありませ
ん。
最後に
飲酒運転は多くの人を不幸のどん底に落とします。決して許されてはいけない行為です。
「飲んだら運転しない!」、「この状況では誘われても飲まない!」という強固な意志を持つ
ことが何よりも大切です。
また、飲むことが決まっている場合は他の交通手段を使う、迎えに来てもらうなどが本来の
手段でしょう。
しかし「車で通勤しているから帰りは絶対に飲まない!」と思っていても社会生活を営む以
上突然の飲酒の機会はあります。そうなったときに必要なのがまさに運転代行業者の方々なのです。
運転代行業者の頑張りのおかげで飲酒運転に手を染めずに安全に帰宅できる人がいるので
す。運転代行業者がいなければ飲酒運転は更に増えるかもしれません。
運転代行業は飲酒運転を減らし、交通社会の秩序に貢献し、悲惨な飲酒運転による事故で悲
しむ人を減らす。そういったことに繋がる社会的にとても有意義な仕事なのではないかと
私は思います。
行政書士西久保大地事務所
西久保 大地